《第3話》
大学時代に飛び込んだ、特異な世界。
それは、上半身ハダカの男が、三本のロープに囲まれた四角いジャングルの中で……。
そう、実は私は大学時代、「学生プロレス」という特異な世界に身を置いていた。
「プロレス」と聞いて、私のパーソナリティーと即座にイメージが一致した人は、(私の両親も含め)今まで会ったことがない(笑)
私が中学生の頃、世間ではアントニオ猪木やタイガーマスクが人気を博し、時代はまさにプロレス・ブームの全盛期だった。
あの頃は、男子が学校の廊下で友達とすれ違う時は相手にラリアットをぶち込むような、いわゆるプロレスファン少年が沢山いた。
そして私もその一人だった。
コンプレックスの反動もあって、「強いもの」に憧れていた私は、大学に入り、自然と「学生プロレス」に魅了された。
学生プロレスとは、大学生たちがサークル活動としてプロレスを行い、全国の大学で連盟を組んで、階級別にタイトルを競い合うスポーツだ。
当時は、TVのバラエティや深夜番組などで「学プロ」の特集が組まれたり、ニュースで報道されたりするほど、一つの「ジャンル」として認識されていた。
しかし、それは通常のプロレスよりもかなりお茶らけた、お笑いの要素で観客を喜ばせる学生も多く、一部には、まるで体を張ったアマチュア芸人のような、スポーツとはかけ離れたイメージが定着していた。
(ちなみに…こうしたスタイルをコミックプロレスと称していたが、ある意味、ストロングスタイル以上に高度なスキルやセンスを要する分野である事をお断りしておく^^)
だが、もう一方では、各大学の看板を背負って、数百名のレスラーが真剣にタイトルを争うような、本格派ストロングスタイルの活動をしている学生も大勢いた。
そもそもクソまじめで恥ずかしがり屋の私は、後者のタイプで、かなり練習にも真面目に励んだ。
しかし、どうして「背が低い」コンプレックスと「学生プロレス」が関係あるのか?と、普通は思うであろう。
それは、私が所属していた階級に関係があった。