
《第4話》
学生プロレスの世界にも、体重別の階級がある。
背が低い私は、最軽量級に位置する、「ライトヘビー級」の所属となった。
実は、この「ライトヘビー級」こそが、学生プロレスの超花形、飛んだり跳ねたり、エンターテイメントとして最高に人気の高い階級だったのだ。
そして、この階級に、自分の短所、欠点が消えてしまった秘訣があったのだ。
私が初めて、ライトヘビー級の先輩の試合を見たとき、
「これだ! これをやりたい!」
と、強い憧れを持ち、本当に無我夢中で練習をして、気がつくと3年生で全国学生チャンピオンになっていた。
私は、強烈なコンプレックスの元となっていたはずの自分の「背の低さ」のお陰で、大好きなプロレスの、しかも超花形階級で脚光を浴びた。
この時こそ、本当に「この身長で良かった!」と、心の底から思い、両親に感謝できたのだ。
しかもこの頃、学生プロレスは一大ブームとなっていて、テレビで放送されることも多く、ライトヘビー級の学生チャンピオンだった私は、首都圏のNHK教育テレビ以外の全てのテレビ局に出演した。
さらに私のあるチャンピオン防衛戦は、スポーツ紙に「プロ顔けの試合」と報じられ、TUTAYAにもレンタルビデオで置かれていたほどだ。
コンプレックスの塊で、自分に取り柄など何もないと思い悩んでいた思春期の私からしてみれば、それは、まるで夢のような世界だった。
何度もテレビに出て活躍する私の姿を見て、両親も本当に喜んでくれた。
(これで喜ぶ親も親ですが・・・笑)
この経験以来、私は「背が低い」という点で悩んだことは一度もない。
つまり、自分の悩みやコンプレックスなんて、隠したり、克服したりしなくても、それをそのまま生かせる場所が必ずある、ありのままの自分で、自分を輝かせる役割がある、ということを私は発見したのだ。
思春期には「短所」と思っていた自分の低い身長は、むしろそのまま生かすことで、自分も光り輝き、みんなにも喜んでもらえる存在になれる。
こんなに嬉しくて、こんなに楽なことはなかった。
短所も長所も、見方を変えれば役割になる。するとそれは、一瞬で喜びに変わる。
このことを私は身をもって体験した……
……折角なので、Youtubeやニコニコ動画にアップされ、学生プロレス界では「伝説の試合」と呼ばれている、私のチャンピオン防衛試合の映像を、ここでご覧いただこうと思ったのですが、それはまだ先にしておきます。
なぜならその映像は、絶頂期だった私に突然起きた、ある衝撃的な出来事と大変深い関わりがあり、私はその出来事がきっかけで、真の意味で「本当の自分」に出逢うための道へと、足を踏み出す事になるからです。
次回、私が心の世界に、更に深く足を踏み入れるきっかけとなった、ある出来事の話をしたいと思います。